沿革

開発第1期(1992年~)

1992年3月に東京工業大学を定年退職した武者利光が、株式会社かながわサイエンスパークおよび株式会社エヌエフ回路設計ブロックの支援を得て、同サイエンスパーク内に研究所を開設した。そこで、東京工業大学在籍中に行った研究の一部を継続し、1994年2月に、脳波の中に潜む脳活動についての情報を解読する新しい技術を開発して商品化して「脳機能解析システムBFA」と名づけた。このシステム販売と同時に、関連した研究開発の受託を行う株式会社脳機能研究所を設立した。また大学等の研究機関との共同研究も積極的行っており、大学院生の研究の支援により、すでに2名の博士が巣立っている。BFAの主な機能は「双極子追跡法」と呼ばれるもので、脳波の発生源の位置と強度を脳波から推定する手法である。癲癇の発生源の位置推定は数ミリメートルの誤差で行うことが出来る。また文字を認識する際の脳内の情報の流れの追跡にも用いられた。ここまでは、武者利光が東京工業大学で得た研究成果に基づいた技術開発である。

開発第2期 (1994年~)

この時期からは株式会社脳機能研究所として独自の技術開発期に入る。この頃は、突然死、過労死が頻発して社会的な関心を集めていた時期で、これらを予防するために、精神的なストレスをモニターするアルゴリズムの開発に注力した。その産物として、心の状態を数値的に計測して秒単位で表示する「感性スペクトル解析法 (Emotion Spectrum Analysis Method; ESAM)」という新技術が誕生した。ESAMは感性状態を「ストレス、緊張度」、「喜び、満足感」、「悲しみ、落ち込み」、「リラックス」の4つの独立な基本成分に分解して、それぞれのレベル変化を秒単位で表示する(そこで「感性スペクトル」という名前をつけた)。テレビやコンピュータのモニターには赤・緑・青の3種の発光素子が並んでおり、その発光強度を調整することで任意の色を出している。これを光の3原色と呼んでいる。これと同じように、感性状態は4基本状態の重ねあわせでほぼ表現できることを明らかにした。この技術は、次のような応用分野を持っている。

  • イ)各種製品がその利用者に与える「好感度」や「満足感」を客観的に表示する。
  • ロ)商品デザインの評価
  • ハ)性格判定
  • ニ)潜在能力開発
  • ホ)学習環境の評価
  • ヘ)都市環境の評価
  • ト)睡眠の質の判定
  • チ)ビジネス・コンサルティング
  • リ)精神的ストレスのモニター
  • ヌ) 精神集中度・意識レベルのモニター

このシステムは、心の研究のみならず、産業界で広く応用されている。

開発第3期(1995年~)

東京医科歯科大学神経科の大久保先生および寺崎先生との共同研究から、認知症患者ではα波の双極子度が正常者に比べて低いことがわかり、この原因の究明を行った。慶応大学の院生原淳子さんは学位論文のテーマとして、大脳皮質の3次元モデルを用いたニューロン活動と脳波との関係に関する詳細な計算機シミュレーションにより、その原因を解明した。この結果が発展して、脳内のシナプス・ニューロン機能低下度を量的に推定する「脳機能低下度推定法(Diagnosis Method of Neuronal Dysfunction;DIMENSION)」という技術が生まれた。1998年から2000年にかけての国立精神神経センター武蔵病院との共同研究で約120名の正常およびアルツハイマー病患者について、MRI、SPECTなどを用いて行った診断結果との比較から、DIMENSIONはアルツハイマー病の診断に対する高感度な補助手段として利用できることが証明された。さらに聖マリアンナ医科大学との共同研究によると、問診で高得点が得られてもDIMENSIONの評価が低い場合には6ヵ月後にはアルツハイマー病の症状が進行し、問診の得点も低下することが確認された。これと平行して、木村クリニック、株式会社芸術造形研究所および東北福祉大学感性福祉研究所との共同研究により、株式会社芸術造形研究所で開発した臨床芸術が、認知症の脳リハビリとして著しい効果のあることがDIMENSIONによって確認された。また木村クリニックおよび産業技術総合研究所との共同研究では、同所の柴田崇徳氏が開発したロボット「パロ」と遊ぶことが脳リハビリ機能を有することなども確認された。また脳機能活性化を狙ったサプリメントの効果測定や頭脳的疲労の計測にも用いられている。

開発第4期(2002年~2006年)

DIMENSIONはニューロン機能の全体的な低下を推定するが、脳のどの位置の機能が低下しているかという知見は与えない。つまり識別診断の支援は行わない。そこで脳波解析をもう一歩すすめて、どこが悪いかを画像的に表示するL-DIMENSIONという新技術を開発した。これは脳波の局所的なゆらぎ情報を利用する。アルツハイマー患者について、L-DIMENSIONによるニューロンの異常活動部位とSPECTによって得られた脳血流低下部位とがよい対応を示すことが確認された。ニューロン異常の性質も表示できる新しい脳機能画像法である。富山大学医学部脳神経外科の遠藤教授および富山病院の柴田医師との脳梗塞の治療経過のL-DIMENSIONによる追跡研究が行われている。2006年2月28日に川崎産業振興会館で島田晴雄慶応大学教授、長谷川和夫聖マリアンナ医大名誉理事長とともに市民に対してDIMENSIONによる認知症の予防の可能性を訴え、阿部孝夫川崎市長からこの技術を用いて認知症予防の先進自治体を目指す、という挨拶があった。
株式会社脳機能研究所は2005年3月に川崎市高津区のKSPから川崎区浜川崎の京浜ビルに移転した。

開発第5期(2007年~)

2007年2月末に東工大横浜ベンチャープラザに移転した。