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| 脳の表面層には150億から200億の神経細胞が分布しています。これらの神経細胞が活動すると、微弱な電流が神経細胞から流れ出して、頭皮上に電位が現れます。この電位を右の耳朶を基準にして、頭皮上の定められた21箇所で5ミリ秒毎に3〜5分間記録します。その一例を図1に示します。ここに描かれている線は電位の等しい場所を結んだもので、等電位線といいます。地図で山の形を示す等高線と同じ意味を持っています。 |
| 正常者の場合(図1左)には、電位のピークが一つで、そこからなだらかに電位が減少しています。こうなるのは脳表面層の神経活動が一様なときです。右側のアルツハイマー患者の場合には電位のピークまたは窪みが幾つか見られます。これは神経細胞の活動がモザイク状にムラになっているので、そこの電位が異常になっていることを意味しています。 |
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| アルツハイマー患者の脳波は時間的に激しく変化をしていますので、その例を図2に示します。あるときは非常に乱れたかと思うと、次の瞬間には「正常」に近くなります。神経細胞の機能が低下すると状態が非常に不安定になることが分かりました。 |
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| そこで、頭皮上の電位分布の滑らかさを数値的に定義することにしました。正常者では、「滑らかさ」がほぼ一定で「1」に近いのですが、脳機能が低下してくると(神経細胞の機能が全体的に一様に低下するということは先ず起こらないので)、滑らかさの平均値が減少すると同時に、瞬間的な「滑らかさ」が平均値の周りに大きく変動するようになり、変動の大きさを表す「標準偏差」が大きくなります。 |
| このような状況が明瞭に読み取れるのは、狭い周波数幅の中に大きな振幅を示すアルファ波です。そこで滑らかさの平均値をDα、その周りの変動の標準偏差をDσという量で表しますと、脳機能低下はこれら2つの量で数値的に表すことができます。 |
| これらの量はある程度の相関を持っていますので、アルツハイマー患者の場合には図3の扇型領域の内部に分布します。もし神経細胞が機能停止をしますと、滑らかさの平均値は低下しますが、その変動は少なくなりますので、この領域の外に出る可能性があります。 |
| HDS-R(改訂長谷川式簡易知能機能検査)のスコアが20〜30の場合にはDαとこのスコアとの相関は顕著ではありませんが、6ヵ月を隔ててもう一度データをとりますと、この6ヶ月間のHDS-Rスコアの低下率と初期のDαとは有意に負の相関を示すことがわかっています。つまりHDS-Rスコアが高くてもDαが「注意領域」にあるときには予後が悪いので、注意をする必要があります。 |
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| 脳波の乱れは脳内の神経細胞機能の変化を敏感に反映します。これまでの経験では、眠気を催しているときにはDαの値が低下しますので、脳波記録をするときには覚醒度を保ちながら安静閉眼状態にしてください。また朝から夕方までのDαの推移を記録しますと、朝方に脳機能が高く、夕方に向けて次第に機能が低下する「朝型」の人と、この逆に夕方に向かってDαが上昇する「夕型」の人のあることがわかります。したがって、長期にわたって脳機能変化をモニターするときには、この「型」を調べて、同じ時刻に脳波の記録をしてください。 |
| 麻雀など長時間にわたって集中的にゲームをしますと、前後でDαが著しく低下する場合があります。このことから、精神的な疲労が一時的にDαを低下させるものと考えられます。 |
| Dαは、測定時の脳機能(シナプス・ニューロン機能)の低下を表しますが、その原因が何であるかは慎重にお考えください。 |
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