花卉印象と脳波について

お茶の水女子大学 山本佐代子 田中美枝子
(独)農業技術研究機構 平田良樹
(株)脳機能研究所 佐瀬幹哉


[本研究の目的]
・「きれい」「優雅」「豪華」といった多くの形容詞で表現されている花卉の 印象を,なるべく少ない形容詞で要約的にあらわすこと
・花卉の印象と対応する指標を,花卉観賞時脳波から見出すこと


[手法]
・花卉への関わり方を性別・世代別にアンケート調査する。
・花卉に興味のある性別・世代の被験者 において,花卉観賞中の脳波を測定し, 直後にその花卉の印象に関するアンケートに回答してもらう。
・花卉(写真)を見せて,その花卉の印 象についてのアンケートを多数の被験 者に対して実施する。


花卉への関わり方アンケート
回答者内訳(n=308人)
アンケート結果(花卉の好き嫌い)
日常生活に花は必要か?(女性)
日常生活に花は必要か?(男性)

花卉観賞時脳波測定実験

被験者:30代〜50代女性9人(花卉に対し興味のある性別・世代)
観賞対象花卉:ヒマワリ8種,グラジオラス4 種,ケイトウ5種,ユリ4種,サボテン2種, バラ1種,キク2種,ヒガンバナ2種,コスモ ス1種,トルコギキョウ2種,他2種 **本数・観賞距離を変えて観賞
日を改めて3回測定

スターゲーザー(赤)
 バラ

[実験手順]
・被験者の花卉への興味等調査
・電極装着
・安静閉眼
・(この間に花卉を被験者の前に設置)
・合図により開眼,30秒間花卉を観賞
・安静閉眼20秒間
・開眼と同時に印象に関するアンケートに回 答(花卉は直ちに片付ける)
・・〜・を繰り返す

[印象評価アンケート]
1 2 3 4 5
ロマンチックな

1 2 3 4 5
エキゾチックな

1 2 3 4 5
派手な

1 2 3 4 5
おしゃれな

1 2 3 4 5
面白い

1 2 3 4 5
あざやかな

1 2 3 4 5
楽しい

1 2 3 4 5
かわいい

1 2 3 4 5
豪華な

1 2 3 4 5
陽気な

1 2 3 4 5
優雅な

1 2 3 4 5
やさしい

1 2 3 4 5
鋭い

1 2 3 4 5
明るい

1 2 3 4 5
素直な

1 2 3 4 5
ほのかな

1 2 3 4 5
高貴な

1 2 3 4 5
きれいな

1 2 3 4 5
さわやかな

1 2 3 4 5
なごやかな

1 2 3 4 5
風流な

1 2 3 4 5
上品な

1 2 3 4 5
かれんな

1 2 3 4 5
とげとげしい

1 2 3 4 5
力強い

1 2 3 4 5
儀式的な

(上段)評価の段階
(下段)表現
5:とてもそう思う
3:どちらともいえない
1:まったくそう思わない

[印象評価形容詞の選定]
・園芸関連の本・国語辞典から52語を選定
・プレアンケートの実施
 対象:花好き25名
 内容:52語にて代表的花卉15種を7段階評価
    52語→26語
(「美しい」「きれい」等同一花卉に対して 同様な評価傾向を示す語を同一とみなし,どちらか一方のみ採用する)


[脳波測定条件]
・測定脳波ch:10−20法 21ch
・開閉眼のタイミングがわかるように垂 直方向の眼球運動も合わせて計測
・サンプリング周波数:200Hz


[花卉観賞風景]

[dmotionExpeRt出力例]

[花卉観賞時EMOTIONパターン]
HK:花卉に興味なし
*好きでも嫌いでもな い
*日常生活に花はあっ てもなくてもよい


[花卉観賞時EMOTIONパターンについて]
花卉観賞中脳波(30秒間)の感性スペクトラム解析結果から,3つのEMOTIONパターンの被験者が存在する
1)P1が大きくRが非常に小さい
2)Rが大きく,N2が非常に小さい
3)P1以外非常に小さい
3)のタイプは花卉に興味がないタイプ
(アンケートにて花は好きでも嫌いでもなく,日常生活に花はあってもなくてもよいと回答)


[花卉の印象とEMOTION]
花卉観賞実験において,被験者は開眼の合図により,花卉を目にする
花卉の知覚→印象「きれいだ!」
・→感情喚起(P1等 の変化)
・(花卉観賞時間 30秒間)

[26語の印象評価形容詞をより少ない表現に要約すること]
評価形容詞26語に対する5段階評価を変数として,主成分分析を行う

[多くの被験者に対する花卉印象に関するアンケートの実施]
20代から70代の男女308人に実施
評価対象花卉(写真):15種
・キク,カーネーション,バラ,ユリ,トルコギキョウ,コスモス,ヒマワリ, チューリップ,サクラ,キンモクセイ, シクラメン,ベゴニア,コチョウラン, サボテン,ヒガンバナ
印象評価形容詞:26語


[308人の花卉評価に関しての印象評価形容詞主成分結果]
  寄与率(%) 累積寄与率(%)
第1主成分
(新規印象軸1)
34.5
34.5
第2主成分
(新規印象軸2)
13.5
48.0
第3主成分
(新規印象軸3)
8.4
56.4
第4主成分 5.6
62.0

[主成分分析結果(第1主成分)]

[主成分と「好き」との相関係数]

[被験者Aの個人主成分との相関係数]

[被験者Bの個人主成分との相関係数]
(Bはフラワーアレンジメントが趣味)

[主成分分析結果(第2・第3主成分)]

[主成分分析結果]
第1主成分(新規花卉印象軸1):「花の好ましさ」をあらわす
「花に対する基本要求」(おしゃれで優雅でとげとげしくない)
第2主成分(新規花卉印象軸2):Sharp ←→Soft
第3主成分(新規花卉印象軸3):Casual←→Formal


[新規花卉印象軸による評価例](308人データ平均)

[花卉観賞時30秒間脳波の感情解析数値と新規花卉印象軸との相関]

[新規花卉印象軸と脳波]
花卉の知覚→印象→感情喚起
・(花卉印象は必ずしもN1,P1と言った感情喚起するものではない)
花卉観賞時の脳波と新規花卉印象軸と の関連を検討する
・(検討対象者:308人の主成分分析結果 と個人主成分分析結果が一致した被験者A)


[脳波解析区間:開眼後の瞬きから瞬きの間3区間]
解析対象電極:16電極(Fpz,Fz,Cz,Pz,Ozをのぞ く )
各解析区間において
α・β・Θ各帯域における各電極の脳波波形の
(1)ピーク電圧値の平均値および標準偏差,
(2)電極間相互相関係数を算出
1解析区間あたりの算出値=3×(16+16+16C2) =456
       ↓
新規花卉印象軸と相関があるものを選択
       ↓
新規花卉印象軸を上記算出値であらわす式を重回帰分析によりもとめる


[新規花卉印象軸2=F(T5Θ1,F7stdΘ1,F7F8β2,・・・)]

[今後に向けて]
・各個人の花卉への関わり方・花卉への興味は,花卉印象に影響する重要な変数である
・花卉への興味等で個人をより詳細に分類するアンケートを考案し,花卉印象への影響を調査する必要がある
・上記により分類された多くの個人の花卉印象と脳波の対応を計測し評価していく